Classici giapponesi con furigana
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しんらん
親鸞
吉川 英治
Leggi 親鸞 (しんらん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 566.138 caratteri · 1127 schermate
五
「キ、斬ッた……」手斧をだらんとぶらさげたまま、彼はよろりと御堂の扉へよりかかった。そして、しばらくは茫然と眸をひらいて白痴のような口を開いていたが、何か、冷やっこいものが、額から顔へかけて、たらたらと流れているのに気づいて、
「血……血だッ……」掌で、彼は顔をこすった。――と、彼の酒気はすっかり醒めていたのである、ぶるるッと、背ぼねから慄いを立てて、
「――オ、オ吉っ」と、うつろな声でよんだ。
急に、身の毛がよだってきたらしい。平次郎は、きょろきょろと鋭い眼を闇にくばった。――手にさげている手斧の白い刃をながめた。
「あーっ、おれは」大変なことをしてしまったと彼は初めて気がついた。自分のすがたが自分の眼に見えてきたのである。
「……わ、わ、わ、……われアあ、どこへ行った、お吉っ」怖々、欄干からのぞいてみると、永年、連れ添ってきた妻は、暗い墓場の穴みたいな闇の底に、死骸になって仆れている。
よろよろと、平次郎はあゆみだした。――眼も、耳も、口も、ぽかんとうつろにしたまま。
一段一段、彼は、悔悟の階段を下りてゆく。
――しかしもう悔いも男泣きも間にあわない。