Classici giapponesi con furigana
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しんらん
親鸞
吉川 英治
Leggi 親鸞 (しんらん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 566.138 caratteri · 1127 schermate
七
慈円はまた、
「だが、おもとなどは、そういう逃避を見つけてはいけない。わしなどは、いわゆる和歌詠みの風流僧にとどまるのだから、そうした心境に、小さい安住を見つけているのじゃ。やはり、おもとの今のもだえのほうが尊い――」
「でも、私は、真っ暗でございます」
「まいちど、叡山へのぼるがよい。そして、あせらず、逃避せず、そして無明をあゆむことじゃ。歩むだけは歩まねば、彼岸にはいたるまいよ」
どこかの築地の紅梅が、風ともなく春のけはいを仄かに陽なたの道に香わせていた。
七
青蓮院の門が見えた。その門を潜る時、慈円はまた、ことばをくりかえして、
「もいちど叡山へもどったがよいぞ」と、いった。
「はい」範宴はそう答えるまでに自分でも心を決めていたらしく、
「明日、お暇をいたしまする」
「うむ……」慈円はうなずいて、木履の音を房のほうへ運んで行った。すると、房の式台の下にかがまって、手をついている出迎えの若僧があった。
慈円は、一瞥して、ずっと奥へはいってしまったが、つづいて範宴が上がろうとすると、若僧はふいに彼の法衣の袂をつかんで、
「兄上」と、呼んだ。
思いがけないことであった。