Classici giapponesi con furigana
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しんらん
親鸞
吉川 英治
Leggi 親鸞 (しんらん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 566.138 caratteri · 1127 schermate
けれど、不可思議なことには、攫われてゆく女性のほうが、そういう場合に、決して、悲鳴をあげたり、大声で救いを呼ぼうともしないのである。そして、いつのまにかまた、元の局にもどって、取り澄まして、その怖ろしさをも人に語ろうとはしない。
衛府の小者たちは、そんな例を毎晩のように見かけるけれど、これも、大して異ともしない顔つきで、多くは見のがしていることが当り前になっていた。
「鈴虫様……。何を泣いていらっしゃるんですの」独りがさびしくなると、松虫はきっと仲のよい鈴虫の局を訪ねるし、鈴虫が何か思いあまることがあると、松虫の局へ行って、姉のように、何事も打明けていた。
「…………」今、ふとそこを訪ねると、鈴虫がただひとりで、燈火の下に俯伏しているので、
「また、あの御老女に、何かきびしいことでもいわれたのですか」顔をさし覗くと、
「いいえ」
「そうでしょう、きっと、そうに違いない。ふだんの御寵愛がふかいだけに、こういう折こそと、事ごとに、辛く当たられる私たちです。私も、何度も、唇を噛んでいるのです。わけて、あなたはおとなしいから」
「もう、そんなことなど、忍びもしますが、今日は、余りにひどいことを、皆して、つけつけというばかりか、誰やら、戯れ和歌にまで詠んで人を謗るので、口惜しくなってしまったのです」