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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

「あのチョビ安を抱きこんで、ここでなんとか一芝居うってみてえものだが――」

とは思うものの、与の公、頭をかいて、

「どうも、あの泰軒てえ乞食野郎がいるあいだは、恐ろしくて寄りつけもしねえ」

手も足も出ない与吉。それでもまあどうやら丹波の御機嫌を取りなおして、妻恋坂道場の供待ち部屋にごろっちゃらしながら毎日、麻布林念寺前の柳生の上屋敷のあたりをうろついていますと……。

ある日のこと。庭の隅がガヤガヤするから、武者塀の上からヒョイとのぞいて見ると、注連縄を張りめぐらし、ありがたそうに鍬を拝んで……お鍬祭。

ふしぎなことをすると思った与の公、とび帰って峰丹波に報告する。

さすがは、不知火流の師範代として、智も略もある人物。じっと眼をつぶってしばらく考えていたが、

「与吉、すまぬが、すぐに草鞋だ」

「ヘエ、あっしがはきますんで。だが、どっちの方角へ向けてネ?」

「ウム、今日にも林念寺の屋敷から、国おもて柳生藩をさして、急使がたつに相違ない。貴様、そのあとをつけてナ、ようすをさぐるのじゃ。源三郎の兄対馬守が出府するようなことがあっては、当方にとってこのうえもない痛手じゃからのう」