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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

四

あたいの父が知れたんだい! べらぼうめ! 朝までなんか待っていられるかい」

とチョビ安は、涙のいっぱいたまった眼で、えらい鼻息。

「あたいの父はね、こんどの日光の式に、紫の着物を着て出る人なんだって。その式にまに合わねえと、たいへんだ。おじちゃん、連れていっておくれよウ。日光には、お美夜ちゃんも作爺ちゃんも、みんないるんじゃアねえか」

はしゃぎきったチョビ安は、

「コウ、泰軒坊主め、すぐ出かけようぜ」

と、調子にのってどなるさわぎ。

使者だと言った覆面の侍が、静かに泰軒に目礼を残して、帰っていったあとである。

この、顔をかがやかし、眼に涙を浮かべて、いさみたっているチョビ安を見ては、泰軒先生も神輿をあげざるをえない。

「ウム、さもありなん。それでこそ親子の情じゃ」

「なに言ってやんでえ! 何がアリナンでえ。サア、早く早く!」

とせきたてられて、泰軒先生、急にこの真夜中に、チョビ安兄哥の手を引いて、はるばる日光へ出発することになったのである。

したく?

冗談じゃアない。二人ともお尻をからげて、冷飯ぞうりを引っかければ、もうそれでりっぱな旅のしたく。

型ばかり雨戸をしめて、路地へたちいでた泰軒居士、長屋じゅうへひびきわたるような大声をはりあげ、