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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

竹筒

一

かたわらの草むらから、ぬっと二、三人の人影が立ちあがって、

「コラコラッ、いずこへまいる」

お百姓などは、腰をかがめて、

「へえ、裏見の谷へ、草を刈りにまいりますので」

「いかん! この道を通すことはあいならん」

二、三人が口をそろえて、

「名主よりお触れ書がまわっておるであろうが。さては貴様、無筆だな。イヤ、無筆なら無筆で、読み聞かせられておるはず」

「この道は通行禁止じゃ。この付近へ立ち寄ってはならぬぞ」

きびしく叱りつけられて、追い返されてしまう。

とんぼつりの子供など、まれに看視の眼をまぎれて、この林間の小みちをかなり奥まで迷いこんでゆくと……。

むこうのこんもりした木立ちのかげにわらぶきの屋根が見える。ひっそりとして、人の住んでいる気配もない。

が、この屋根の見えるところまで近づくのは、上乗の部で。

たちまちどこからともなく、バラバラっと造営奉行の手付きらしい役人が現われて、「ウヌ! こんな所まではいりこんでくるとは、めっそうもない!」――とばかり。

眼の玉がとび出るほどどなられて、送りかえされる。

厳重をきわめている。

この小さな百姓家一家を、十間おき、半町おき、一町おきといった具合に、幾重にも看視が伏してとりかこんでいると見える。