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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

二

駕籠について来た上屋敷の侍がひとりごとのように言いながら、闇の足もとを見まわすと――。

近くに、断末魔のうめき声……まるで地の底からゆすれあがってくるような。

耳ざとく聞きつけた源三郎が、その声を頼りに探ってゆくと、左側の家のしめきった大戸によりかかって、一人の侍が、血の池の中に大あぐらをかいたまま、

「駕籠は……駕籠は――」

口ばしっている。

「駕籠はここにあるぞ。しっかりせい!」

と肩に手をかけて、源三郎がのぞきこむと、

「ウム、駕籠はここにあるが、乗っておったお藤どのは、あの浪人者のあとを追って――」

「サ、その浪人者だが、どっちの方角へまいった?」

「は……ア、アノ、この山下を車坂のほうへ、ソ、それから、なんでも二人の話では――」

「二人の話? すると、一風宗匠代参の腰元と、その狼藉者とは、知りあいとみえるな。シテ、ふたりの話では――どこへゆくと申しておった?」

「ナ、なんでも、浅草竜泉寺の――?」

「コラッ! 気をたしかに持てッ! その浅草竜泉寺の――?」

「ハッ、拙者は、もうこれにて……竜泉寺のとんがり長屋とかへ――闇中に、そういう話し声が聞こえました」