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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

鎧櫃

一

「オヤッ! あれはッ!」

不意に手をあげて、与の公、前方を指さした。

「なんじゃ! 何が見える」

儀作がつりこまれて、爪立ちして道のむこうを望み見たとき。パッともと来たほうへかけだしたんです、与吉の野郎。

鎧櫃

一

あれから、何日たったろう。

それとも、もう十何日?

とにかく……。

今になっても、柳生源三郎が現われないところをみると、あのとき、あの穴の底で三方子川の水にひたされて、お陀仏になったにきまっている――。

とは、峰丹波一味の、たれしも思うところ。

「ああ、自分ほどあわれなものがあろうか。恋しいと思う人を、あんな手段で亡きものにしなければならなかったとは」

かってな人もあったもので、こんなことを考えてひとりふさいでいるのは、司馬十方斎先生の御後室、お蓮様。

「でも、あの方もあまり強情すぎたから、こんなことになったんだわ」

胸に問い、胸に答えて、このごろは部屋にとじこもって考えこんでばかりである。

ふしぎなのは、同じ屋敷内の奥まった部屋部屋にがんばっている安積玄心斎、谷大八等、伊賀から婿入り道中にくっついてきた連中です。

主君の仇敵は、同じ邸内のこの丹波とお蓮様の一味とわかっているはずなのに。