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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

二

「ほほほほ、いいえ、日光は日光なんですけれど、いつお爺ちゃまにお眼にかかれるか……それがねえ」

二

じっと考えこんだお蓮様は、腑に落ちかねるおももちで、

「ほんに、どうしたというのでしょうねえ。あの鹿沼新田のお関所でお調べを受けたとき、母娘かということを妙に念を入れてきいていたようだけれど」

風に話しかけるように、お蓮様はひとりごとをつづけて、

「母娘ということに、何か意味があるかしらん……ハイ、たしかに母と娘だと言うと、お役人衆がマアたいそう喜んで、さっそく二人を駕籠に乗せて、まっすぐにこの家へ連れてこられたのだけれど――」

その途中。

駕籠わきに引き添う侍たちのヒソヒソ話に。

「大切な客人」とか、「運よく母娘づれが通りかかるとは、幸さきがよい」とか――。

そうした言葉が、チラチラとお蓮様の耳にはいって、駕籠のなかの彼女に、しきりに首をひねらせたのだったが。

この百姓家は、前に用意がしてあったものとみえる。

きっと持主から買いとって、家を明けさせ、客を迎える準備をしておいたものとみえて、ここらの山奥の百姓家にしては、内部は小ざっぱりと掃除され、最近手を入れたあとも見られるのである。