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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

十五

泰軒先生は?

と見ると、やってる、やってる!

むこうで、結城左京をはじめ、刀を取って引っかえしてきた不知火流の七、八人を相手に、

「李白一斗詩百篇――か。ううい!」

酒臭い息をはきながら、たちまわりのまっ最中。

十五

「李白一斗詩百篇、自ら称す臣はこれ酒中の仙」

泰軒先生、おちつきはらったものです。

思い出したように、この、杜甫の酒中八仙歌の一節を、朗々吟じながら――。

棟の焼けおちた大きな丸太を、ブンブン振りまわして、だれもそばへよれない。

のんだくれで、のんき者で、しようのない泰軒先生、実は、自源流の奥義をきわめた、こうした武芸者の一面もあるんです。

トンガリ長屋の人たちは、この泰軒先生のかくし芸を眼のあたりに見て、ちょっと穴を掘る手を休め、

「丸太のような腕に、丸太ン棒を振りまわされちゃア、近よれねえのもむりはねえ」

「ざまアみやがれ、侍ども!」

「オウ、感心してねえで、穴掘りをいそいだ、いそいだ」

不知火の連中は、気が気ではない。泰軒一人でも持てあましぎみだったところへ、文字どおり百鬼夜行の姿をした長屋の一団が、まるで闇からわいたようにとびだしてきて、見る間に穴を掘りだしたのだから、結城左京らのあわてようッたらありません。