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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

五

その泰軒先生、いま、お兼婆さんにグングン手を引っぱられて、屑竹の住居へやってきた。

五

「酒は飲むのもよいが、盃の中に、このお母の顔を思い浮かべて飲むようにいたせ。いい若い者が、酒を飲むどころか、酒に飲まれてしもうて、その体たらくはなにごとじゃッ」

先生の大喝に、屑竹はヒョックリ起きあがり、長半纏の裾で、ならべた膝をつつみこみ、ちぢみあがっている。

もうこれでいいだろう……と、チラと母親へ微笑を投げた泰軒、

「ほんとに先生、御足労をおかけしまして、ありがとうございました。これで竹の野郎も、どうにか性根を取りもどすでしょう。どうもお世話さまで――」

と言うお兼婆さんのくどくどした礼を背中に聞いて、出口へさしかかると、

「オヤ……?」

と歩をとめて、先生、足もとの土間の隅をのぞきこんだ。

「なんじゃ、これは、茶壺ではないか」

つぶやきつつ、手に取りあげ、灯にすかしてジッとみつめていたが、「ウーム」と泰軒、うなりだした。

「ううむ、きたない壺だな。こんなきたない壺が、このとんがり長屋にあっては、長屋の不名誉じゃ。イヤ、眼ざわりになる。じつにどうも、古いきたない壺だナ」