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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

三

三

縁の高い書院造りの部屋が、眼の前にある。

その明るい障子が、静かに中からあいて、デップリした人影が現われたのを見たとき、庭の沓脱ぎの下にすわっているお美夜ちゃんは小さなからだが、ガタガタふるえだした。

押しこみをおさえたり、人殺しをつかまえたり……お奉行さんなんてどんなにこわい小父ちゃんだろう!

が。

そのとたんに。

お美夜ちゃんの聞いた声は、ビックリするほどやさしい、親しみぶかいものであった。

「そちら三人は、さがっておるがよい」

お美夜ちゃんをとりまいていた大作、重内、作三郎の三人は、跫音もなく庭の闇へ消えこんでゆく。

意地のわるい三人のお武家さん――と思っていたものの、サテ、こうしてひとり取り残されて、お奉行様と相対になってみると、恐ろしさから、その三人が急に恋しくなって、

「小父ちゃんたち、行っちゃアいや、ここにいて!」

とお美夜ちゃん、泣き声をはなってあとを追おうとする。

しずかな含み笑いが、お広縁の上から。

「コレ、何もこわがることはない。この縁側へ腰をかけて、わしに、その壺というのを見せてくれぬか」

灯をしょった顔を振りあおいで見ると、眼尻に長いしわをきざんだ、柔和な笑顔……ほんとに、これが南のお奉行様かしら?