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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

一

変な文句だが――。

これでも田丸主水正、その白髪頭に、もう四、五本白いのをふやして、ひと晩かかって、やっと考えぬいた、これが、いわばまア、即席の祝詞なんです。

高大之進をはじめ尚兵館の若侍一同、今日は裃を着て、くすぐったそうに並んでいる。

場処は、麻布林念寺前なる、柳生対馬守のお上屋敷。

お稲荷様をまつってある築山のかげ。

きょうはそのお稲荷さまなんか、あれどもなきがごときありさまで、今その祠のうしろの庭隅に、この壮大なお祭りが開かれようとしています。

称して……お鍬祭。

土を掘る縁起祝いだ。

愚楽老人に対面して、急いでお城をさがった主水正、ひそかににせ猿の示した庭の隅へ行ってみるとなるほど、そこが三尺四方ほど新しい土を見せている。たしかにゆうべあたり掘り返して、何か埋ずめてあるらしい形跡。

愚楽老人配下の忍びの者が五、六人、ゆうべこっそりこの邸内へ潜入して、ここに日光の費用を埋ずめ、またあの細工入りの壺を、松の木にひっかけていったというわけ。

今は主水正、すべてが明らかだが、人心の動揺を思っては、これはあくまで先祖の埋ずめたもの、あの壺はどこまでも正真正銘のこけ猿ということに見せかけて、苦しい一時を糊塗せねばならぬ。