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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

五

交野の辻という野原があります。そこへさしかかると、鳴いて飛びたった一羽の雉子が、あわれにもかりうどの矢に射おとされるのを見て、娘は父の悲しい思い出を連想し、駕籠の中から、

「物言はじ父は長柄の人柱、なかずば雉子も射たれざらまし」

有名なおはなしでございます。

さて、今この日光造営奉行所の奥の一間には――。

五

「物言はじ父は長柄の人柱――」

この歌をよんで泣いた女の心をはじめて知った良人は、そうであったか、あの父の死を悲しんで唖を通していたので、自分に情のないわけではなかったのかと、もとの鞘におさめて、あと仲よく暮らし、その交野の辻には雉子塚を作り、三本の杉を植えて長く記念にしたという。

そのほか、人柱の伝説は、諸国にたくさんつたわっております。

そこで、今。

山王わきの日光修営奉行所の奥の奥、壁の厚い一間に、三人の人影が黙然と腕をこまぬいている。

壁の厚いのは、密談のもれ聞こえるのを防ぐためで、工事の進行程度、経費の件その他に、この日光造営にはいろいろと秘密が多かったところから、奉行所には、かならずこうした密室が一つ二つ造られたもので。

「それでは――」