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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
03 日光の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页
四
長屋には、もうすっかり灯がはいって、主人のいない作爺さんの家には、狭い水口でお蓮様が、かたことささやかな夕餉のしたくを急いでいる。
人間って、気持の持ちようや環境ひとつで、こうも変わるものでしょうか。
昨日までは、剣術大名司馬道場の御後室様として、出るにも入るにも多勢の腰元にとりまかれ、妻楊枝より重いものは持ったことのないお蓮様。
源三郎への恋をあきらめ、丹波とともに仕組んだ道場乗っ取りの陰謀にも、ふいと思いを断った彼女。
眼が覚めたように思い出したのが、何年となくこの長屋に置きざりにして、暑さ寒さの便りひとつしたことのない父なる作阿弥と、その手もとにあずけっぱなしの、わが子お美夜のうえであった。
世をすて、何もかも振り切って、とびこむようにここへかけつけて来てみると、入れちがいに父の作呵弥は、日光御用に召し出されてしまう。
しかも。
わが子に違いないお美夜ちゃんは、いつまでたってもなじんではくれず、チョビ安という腕白小僧といっしょになって、白い眼を見せるばかり。
「あんたが悪いのじゃから、辛抱して母のいつくしみを見せにゃならぬ。いわば、自業自得というものじゃでナ」