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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

二

玉虫色のおちょぼ口を、何事かこころもちあえがせて、

「峰様におたずね申しあげます。お蓮様はどこへゆかれましたか、御存じでは?――宵の口から、何かひどくうち沈んでいらっしゃいまして、お夕餉のお膳をおすすめしても、食べとうないとおっしゃるばかり、お箸ひとつつけずに、そのままお下げになりましたが、いつのまにか、ふっとお姿が見えなくなりまして――」

「ナニ?」

ギョロリと大きな眼を向けた丹波、この眼で、腰元などにはひどくおどしがきくので。

「そこここをおさがし申したであろうな」

「それはもうおっしゃるまでもございません。お部屋というお部屋はもとより、お庭のすみずみまで、わたくしども一同手わけをして……もっとも、鬼どもの住家のほうへは、恐ろしゅうて近よれませんが」

侍女どもが「鬼の住居」と言っているのは、源三郎とその一党が、ふしぎな頑張りをつづけている同じ邸内の一角のことだ。

「フウム」

丹波は思案に眼をつぶって、

「十五や十六の少女ではない。何かお考えがおありで、そっと戸外へ出られたものであろう」

「それにいたしましても、私どもへひとことのおことばもなく――何やらこの胸が、さわいでなりませぬが」