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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

三

やがて神奈川、狩野川をはさんだ南北に細長い町。海に面した見はらしのいい場所に、茶店が軒を並べております。おなじみの広重の絵を見ましても、玉川、たるやなどとありますとおり。

有名な文句の、

「おやすみなさいやアせ。あったかい冷飯もござりやアす」

「旦那さん、煮たてのさかなのさめたのもござりやアす。おやすみなさいやアせ」

細い坂みちに姐さんたちが出ばって、口々に客を引く。儀作もようやく咽喉の乾きをおぼえましたので、潮風の吹きあげる縁台に腰かけて、

「日中はなかなかむすじゃあねえか」

額の汗をふいておりますと、

「おやすみなさいやアせ」

表のほうに、客引き女の黄色い声がわいて、儀作のあとを追うように、ズカリとその茶店へはいってきた一人の男。

唐桟の袷をつぶに着て、キリッとしりばしょりをしている……小意気な、ちょいとした男前。

三

ひさしぶりに、鼓の与吉。

彼は。

同じような茶壺がいくつも出てきて、与吉、とほうにくれてしまったんです。

そのうえ、丹下の殿様も、酷えことをしたもので、あの伊賀の暴れん坊といっしょに、渋江の寮の焼け跡で穴埋めにされてしまった。

あのあとから、泰軒坊主とトンガリ長屋の連中がおしかけて、掘り返したそうだが、出てきたのは、水、水――水だけだったと聞いたが……それはそうと、若き主君を失った源三郎づき