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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

八

「ナニ? 丹下左膳が近くにおると? オイ左膳殿! オーイ、丹下……!」

なつかしそうな声でよばわりながら、ガサガサと草を分けて、こっちへ来る気配。

八

道しるべの立っている四つの角――丹波にとっては、知らず、生命の辻。

腰から上を穂すすきの波に浮かべて、ぬっと街道へたち現われた丹下左膳を見るが早いか、

「三方子川尻の、漁師六兵衛の住居以来だったナア」

ニタっと笑って、そうつぶやいた伊賀の暴れん坊、いきなり、右の肩がグイとあがって、白い棒のような光が、細い鏡のごとく陽に光ったと思うと……抜いたのだ。斬りつけたのだ。

居合抜き……。

「アッ痛ウ――!」

ざッくり横腹を割りつけられてうめきながらよろめいたのは、ほかでもない……峰丹波。

「ナ、何をする! これ、源三郎殿、何をなさるる!」

腕の相違というものは、いたしかたがない。

足もひらかず、からだも動かさずに、突如、刀で指さすように横にはらった源三郎の剣を、峰丹波、受けるには受けた。が、胴ッ腹で受けた。これじゃア受けたことにならない。

与吉は、すでに逃げ腰、左膳につづいて草むらからあらわれた櫛巻お藤をはじめ、源三郎手付きの若侍三人、萩乃などあっけにとられているなかで、伊賀の暴れん坊の凜たる声。