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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

二

紺看板に梵天帯のお陸尺が、せまい路地いっぱいに、いばり返って控えている。

「オウオウ、寄るんじゃアねえ」

「コラッ、この餓鬼ッ! そんなきたねえ手で、お駕籠にさわると承知しねえぞ」

陸尺の一人が、そう言って子供をどなりつける。ヨチヨチ駕籠のそばへ歩いてきて、金色の金物のみごとなお駕籠へ、手を触れてみようとしていた三つばかりの男の子が、わっと泣きだす。

母親らしいおかみさんが、子供を抱きかかえて、

「なんだい、おまえさん、何をするんだい。子供に罪はないじゃないか」

取りまいている長屋の連中のなかから、

「このトンガリ長屋へ来て、きいたふうなまねをしやがると、けえりには駕籠をかつぐかわりに、仏様にしてその駕籠へのせてけえすぞ」

「どこの大名か知らねえが、このトンガリ長屋は貧乏人の領地だ。気をつけて口をきくがいいや」

「何を洒落くせえ。柳生一刀流にはむかう気なら、かかってこい」

なんかと、駕籠かきと長屋の人々と、ワイワイいう騒ぎだ。

そのののしり合う声々を戸外に聞いて、田丸主水正は、ここ作爺さんの住居……たった一間っきりの家に、四角くなってすわっている。

「サ、そういう理由でござるから、なにとぞ、さっそく林念寺前の上屋敷のほうへ、おこしを願いたい。