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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

三

「いや、みごとみごと!」

作阿弥のひとりごとに答えて、別の声がした。

馬が口を?

と、作阿弥が振りかえったとき――。

三

いつのまにこの谷へくだって来たのか、跫音もしなかったが、と、ギョッ! として作阿弥が、戸口を振りかえってみると……。

柳生対馬守。

家老、田丸主水正とただふたり、ほかに供もつれずに。

制作の進行ぶりを、おしのびで見に来られたものとみえます。

「どうかの? 足曳はおとなしくじっとして、写生の手本になっておるかの?」

と対馬守、手斧や木くずや、散らかっている道具をまたいで、小屋へはいってきた。

半分板張りになっていて、むこうの土間に、殿の乗馬足曳が、つないである。

厩のように、馬と同居しているのですから、ムッとした臭気が鼻をおそう。

それよりも、あわてたのは作阿弥で、彫刻が完成するまでは、誰にも見せたくない。殿様といえども、眼に触れさせたくないので、大いそぎで、ゆたんのような唐草模様の大きな布を、ふわりと、彫りかけの馬の像へかけてしまった。

そして、ひらきなおって、対馬守と主水正の主従を、おそろしい眼でにらみつけた。

「ちと無礼でござろう。