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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
03 日光の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页
六
別所信濃も主水正も、答えません。
シンと無気味な静寂が、この狭い密室に落ちる。
「昔から人柱は、言い出した者へ当たると申すことだぞ。主水、お前ではないか、さようなことを言いはじめたのは」
ギョッとした主水正、このあいだ妻恋坂の司馬道場で、峰丹波に斬りつけられたときよりも、もっとあわてて、
「ト、とんでもない! 私がなんでそのようなことを!」
と、両手を眼の前に立てて、しきりに手を振る。
じっとみつめていた対馬守、意地の悪そうな微苦笑とともに、
「ソラソラ! その手が、壁を塗る手つきにそっくりじゃ。どうも主水、この人柱は其方へ落ちそうじゃぞ」
主水は真っ蒼になって、
「ジョ、冗談じゃありません」
と、ピタリと両手を膝へおろしてしまった。
これには、別所信濃守も微笑しながら、
「しかし、言い出したものが人柱に当たるということは、昔からよく例のあることで」
「さればさ」
対馬守は重々しく、
「出雲国松江の大橋をかけるとき、人柱を立てることになったが、誰もみずからすすんで犠牲になろうという者はない。そのとき、源助なる者が、着物に継ぎのある者を探して人柱にするがよいと言い出したところが、調べてみると、その源助の背中に横つぎが当たっていたので、いい出した源助が人柱に立てられ、これで、さしもの難工事も落成し、源助は死後長く橋桁を