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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

四

四

「さすがは柳生じゃ。世を捨てた名人を探しだして、一世一代の作を残させるとは、このたびの日光造営は、おおいに有意義であった。その作阿弥の神馬とともに、柳生の名も、ながく残るであろう……と上様からおほめ言葉のひとつも、いただこうというもので」

ここを先途と主水正は口説きにかかる。

作阿弥はじっと眼をつぶったまま、身動ぎもしない。

その小さな老人のすわった姿が、この狭い部屋いっぱいにあふれそうに、大きく見えるのは、彼の持つ技の力が、放射線のように、にわかに炎々と射しはじめたのであろうか。

「わしに、馬を彫って、後世へ残せという……」

口のなかで噛むように、作阿弥は、そうひとことずつ句ぎってつぶやきながら、そっと眼をあけて泰軒先生を見やった。

どうしたものであろう――という無言の相談だ。

泰軒は、すぐその意を汲んで、

「あなたのお心ひとつじゃ、はたからはなんとも言えぬ」

「作爺ちゃん、どこかへ行くの?」

のりだすチョビ安の尾についてお美夜ちゃんも心配げに、

「お爺ちゃん、どこへも行っちゃアいや!」

作阿弥は、ふたたびチラと眼をあいて、幼い二人へ一瞥をくれた。

この老体。