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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

七

何しろ、そのこけ猿のためには、今まで多勢の人間が血を流し、またそのために、いま、若き主君伊賀の源三郎は行方知れず……丹下左膳などという余計者まで飛び出して、まんじ巴の必死の争いを描きだしているその中心――こけ猿の茶壺が、ぶらりとさがって、見つけた若侍の言い草ではないが、さわやかな朝の微風にそよいでいるのですから……。尚兵館の連中、声もない。

七

「ウーム、皮肉な壺だナ……」

うめいた高大之進、松の木へかけよって、壺をにらみあげながら、

「探すときには姿も見せず、とほうにくれておると、こうして松の木などにぶらさがっている。だが、いったい何者の仕業であろうナ?」

あたりの伊賀侍たちをジロジロ眺めまわしたが、こいつだけは誰にも返事ができない。

とにかく。

おそろしく変わった風景です。茶壺を荒縄で縛りあげて、そいつがブランと松の枝にひっかかっているんですから。

「昨夜深更に、何奴かが忍びいって……」

「しかし、これが真のこけ猿の茶壺とすれば、そやつは、よほどわれわれに好意を持っておる者と思わねばならぬ」

屈強の若侍達が、壺を見上げて、ワイワイ言ってる。何かからくりがありそうで、うっかり手出しのできない気持――。