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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

十六

「ヤア! 水だ、水だ!」

「水脈を掘りあてたぞ!」

それじゃアまるで井戸掘りだ……しかし、冗談ではない。しばらく掘りひろげた穴から、コンコンと水が盛れあがってくるではないか。

「こりゃいけねえ。この穴は、きっと三方子川の川底につながっているに相違ねえ」

もう、鍬や鋤ではどうすることもできない。

一同は思案にくれてしまった。

水は、さながら噴水のようにわきあがってくる。

「お父上! お父上! 水の力で浮きあがってこられないの? お父上!」

チョビ安はもう半狂乱。

「オウ、野郎ども! 三尺をとけ。下帯も――」

なかば水音に消されながら、石金さんの胴間声がひびいた。

十六

穴の中から水がわき出たと聞いて、きもをつぶしたのは、結城左京の一派です。もういけない……! これ以上ここにまごまごしていたら、自分たちの身があやうい。

「だめだッ! 引きあげよう」

ナニ、引きあげるんじゃアない。逃げるんだ。

「もうこうなったら、先へ行った峰丹波殿の一行に追いついて、助勢を借りるよりほかみちはない」

ささやきかわして不知火のやつらは、サッと刀を引くが早いか、一目散に闇の奥へ消え去った。