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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
03 日光の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页
三
この言葉の最中に、皆は、庭へ向かった雨戸のほうへ、一度にふり向いていた。
深夜だし、密議のことだし、しめきってある。
ドン! と、その板戸に、何かぶつかる音がしたのです。たった今。
たとえてみれば、人間が一人、力いっぱい体当りくれたような……。
「なんだろう、何者か立ち聞きをしていたのでは――」
「あけてみろ」
「イヤ、貴公、あけてみろ」
「なにを臆病な……よし! わが輩があけてみる」
と気おいだって、たち上がったのは、若侍の山脇左近。
三
威勢よくつっ立ったものの、おっかなびっくり。
だが。
なみいる仲間の手前もある。いまさら引っこみのつかなくなった山脇左近、
「誰だッ?」
叫びながら、端の雨戸を一枚引きあけた。
ドッと音して吹きこむぬれた夜風。戸外には、丑満の暗黒につつまれた木立ちが、真っ黒に黙して、そのうえに、曲玉のようにかかっているのは、生まれたばかりの若い新月。
人っ子一人、犬の仔一匹いません。
照れかくしに左近は、若いお侍さん、小遊興のひとつもやろうというおもしろい盛りなので、意気ぶった中音に、
「たたく水鶏についだまされて……月に恥ずかしいわが姿……なんてことをおっしゃいましたッてね」