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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

六

この家の親爺の六兵衛が、夜の川釣りに、その下流に糸を垂れていて、浮きつ沈みつしてくる二人を見つけるが早いか、近所の者の手を借りて舟を出したのである。

救い上げたときは、左膳も源三郎も、すっかり意識をうしなっていた。隻眼隻腕の異様な浪人姿と、由緒ありげな美男の若侍と今夜の夜釣りには、ふしぎな獲物があったものだと、六兵衛はそのまま、二人をこの自宅に運びいれて、まず、濡れた着物を着かえさせ、一晩ねんごろに看病して、……サテ、この朝である。

「お同伴はまだ気を失っておるようじゃの。まあ、こんなところだが、ゆるゆる逗留して、からだの回復をお待ちなせえ」

「オオオ、そうだ。こけ猿――ウウム、こけ猿を……!」

と、思い出したように、左膳がうなった。

六

引き潮、満ち潮……。

港の岸に立って、足もとの浪を見おろす人は、その干満の潮にのって、いろいろの物が流れよっているのを見るであろう。

緒の切れた下駄、手のとれた人形、使いふるした桶、など、など、など……そのすべてが、人間の生活に縁の近いものであることが、いっそう奇怪な哀愁感をよぶ。

港の潮は、何をただよわしてくるかしれない。