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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

三

丹波は……。

この盛大な十方不知火流の道場とともに、お蓮様とも天下晴れて……だがお蓮様よりは、道場のほうがありがたいのが、丹波の本心です。しかし、それも、故先生の後釜に、お蓮様のもとへ入夫する形でこそ、道場も自然におのが懐へころげこもうというものですから、この土壇場へ来て、こうもにえきらないお蓮さまの態度を見せられては、

「出るところへ出て、拙者がこの口をひらこうものなら、同罪ですぞ、お蓮様」

詰め寄りました。

丹波も懸命です。

三

ものうい初夏の午後だ。はるか妻恋坂の下からのどかな余韻を引いてあがってくる、苗売りの呼び声……。

お蓮様にしたところで、十分この道場には未練があるし、それに、もともと丹波はきらいではないのですから、二言と否は申しません。

さっそく峰丹波をもって、この道場の相続に立てるという……すっかり準備がととのって、その夜、ただいまの時間でいえば、午後七時ごろに、道場の正面に亡き十方斎先生の位牌を飾り、その前に遺愛の木剣を置いて――これがまず式場です。

この不知火道場のしきたりとして、何かあらたまった式事の場合にはかならず家重代に伝わる鎧櫃を取り出して、その前でおごそかにとりおこなうということになっている。