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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

十一

その声を消そうと、峰丹波は大声に、

「御後室様、おみ足がお疲れではございませぬか。サア、出発、出発!」

と、さけんだ。

十一

お蓮さまはそれでも、後ろ髪を引かれる思い。

「源様ッ!――源三郎さまッ!」

胸をしぼるような最後のひと声。

かけもどって、おとし穴をのぞこうとするお蓮様に、きっと眼くばせして丹波が下知。ほとんど手取り足取りにかつがんばかり……。

前後左右からお蓮様をとりかこんで、行列は、歩をおこして去った。

あとには、穴埋め役の一同。

生あたたかい風の吹く深夜の焼け跡に同勢七、八人、あんまり気持よからぬ顔を見あわせて、

「穴の底におぼれてるやつを、土で埋ずめりゃア、これほど確かな墓はねえ。目印に、捨て石の一つもおっ立てておいてやるんだな」

「後年、無縁仏となって、源三郎塚……とでも名がつくであろうよ」

しめった夜気に首をすくめて、誰かが大きなくさめ。

「ハアックショイ! そろそろ始めようではござらぬか」

「フン、気のきかねえ役割だ。こんな仕事は、早くすませるにかぎる」

「しかしなア、なるほど穴は、細いものにすぎぬが、下へいって、かなり大きな部屋に掘りひろげてあるというではないか。