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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

六

「申しわけござりません。手前は、田丸様の御命を奉じ、お国おもてへたち帰ります途中……持ったお壺を何やつとも知れぬ者にうばわれまして――」

「貴様の話は、サッパリわからぬぞ。壺がどうしたとやら申すが、そんなことは気にかけんでもよい」

なぜか対馬守、――すこしもあわてません。

六

対馬守様は、あわてません。ちっとも。

どなるようにつづけて、

「馬鹿なことを申せ、あの主水正が、ほんもののこけ猿を若党一人にかつがせてよこすわけはないッ。さようなものは盗まれても大事ない。それより、主水正より言いつかった使いの口上があるであろう。口上を言え口上を」

斬られる……という覚悟で、御前に出てきた儀作は、

「ヘ?」

と思わず首のまわりを、なでました。ああありがたい! チャンとまだついている。

「ヘェ、申し遅れましてあいすみません。田丸主水正のおっしゃるには、壺の大金はみつかった、それも、ただいまの麻布林念寺前のお上屋敷のお庭隅に、確かに埋ずめてあると申すことで、私が江戸を離れます日には、その場所に玉垣を結いめぐらし、人を近よらしめずに、殿の御出府をお待ち申しておりまする……」