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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
03 日光の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页
三
無益な前身の詮議だてなどなさらずと、早々にお帰りなされたほうがよろしかろう」
「とんでもない! それでは、かく申す家老の拙者が、わざわざ自身で乗りこんでまいった趣旨がたち申さぬ。先ほどから申すとおり、てまえ主人柳生対馬守、このたび日光造営奉行を拝命なされたについては、何がな後世へ残るべき彫刻をほどこして、廟祖御神君の霊をなぐさめたてまつらんと、そこで思いつきましたのが、神馬の大彫りもの……」
「ヤイヤイ、なんでえ! どいたどいた。チョビ安様とお美夜ちゃんのおけえりだ……オヤ! この駕籠は?」
土間口に、チョビ安の大声。
三
田丸主水正は、必死につづけて、
「御承知でもござろうが、日光什宝のうち、まずその筆頭にあげられるのは、本坊輪王寺に納めある開山上人御作の、薬師仏御木像一体……」
と主水正は、まるで、そのあらたかな仏像に面と向かっているかのように、うやうやしく一礼した。
「開山上人。諱は勝道。日光山の開祖でござって、姓は若田氏、同国芳賀郡のお生れですナ。今を去る千百余年、延暦三年二荒山の山腹において、桂の大樹を見つけ、それを、立ち木のままに千手大士の尊像にきざまれたが――」