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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

五

「それに、暇がない。今夜徹宵別所殿と相談のうえ――」

対馬守がそこまで言いかけたときいきなり、外の廊下に声がして、

「殿はこちらですか。主水正でござります。ただいま、首尾よく作阿弥を説きふせて、つれてまいりました。溜りに待たせてございますが」

「オオ田丸か、ナニ、作阿弥が出馬したと。それはそれは御苦労。大成功じゃったナ」

自分の用事はどこへかスッとんだかたちで、ポカンとしていた玄心斎へ、対馬守、何事か思いつかれたように、ニッコリすると同時に、

「爺、安心せえ……主水正、ちょっとここへはいって来い」

五

お蓮様には逃げられる。

源三郎からは、果し状をつきつけられる。

なんとかして、一寸のばしに逃れようと、立会人がなければと、笹の文を書き送ったのに対し。

望みどおり丹波よりも、源三郎よりも、一段上の大剣士が、審判に立つから……という笹の返事が、折りかえし源三郎から来た。

広い庭をへだてて、笹に結びつけた手紙が、二度も三度も棟と棟のあいだを往復したのち。

提出した条件がいれられたとなると、追いつめられたも同然の峰丹波、もはやなんの口実もない。

やがて、朝。

庭の小広い片隅に、源三郎についてきている伊賀侍どもが、ワイワイ言いながら仕合場のしたくをしているのを、峰丹波、こっちの部屋で、どんな心で聞いたことか。