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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

五

このごろでは、先生の高名を聞き伝えて、こうして遠くから、人事相談を持ちこんでくるんです。

「おめえが泰軒てエ親爺かい。お初に……わっしゃア深川の古石場に巣をくってる銅義ってえ半チク野郎だがネ。ひとつおめえさんに聞いてもらいてエのは、わっしゃあ性分で、鯖ア見るのがきれえだってのに、かかあの奴やたらむしょうにあの鯖てエ魚がすきでごぜえやしてね。きょうも鯖、あしたも鯖、どうも家風に合わねえから――」

「なあんだ、大変な人がとびこんできたな」

泰軒が苦笑して、ムックリ起きあがったとき……。

「泰軒小父ちゃん、おいらも相談を持って来た」

と、門口からチョビ安の声。

五

女房の不平をまくしたてようとする銅義を、傍えに押しやったチョビ安は、お美夜ちゃんの手を取って、二人並んで泰軒先生のまえにすわった。

「おじちゃん! 聞いてくんねえ」

泰軒居士は、口をひらく前に、例によってその関羽ひげをしごく。

「なんじゃ、安。いま来客中じゃ。あとで言いなさい」

「なんでエ! 相談のお客さんなら、おいらだってお客さんじゃアねえか」

とチョビ安は、小さな膝をすすめて、

「このお美夜ちゃんが、わからねえことを言ってきかねえから、ひとつ小父ちゃんから、納得のいくように説き聞かせてもらおうと思って……」