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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
03 日光の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页
四
こんど日光へゆくに当たって、お藤をあの一風宗匠づきとして、林念寺前の屋敷内の茶席に残してゆくことになったのですが……。
さて今、お藤は、左膳のうしろから、ノコノコついてゆきながら、
「それで、あたしの仕事というのは、その一風というお爺さんの寝起きの面倒を見ることと、毎晩夜中に、こうしてお駕籠で上野の権現様へおまいりして、はるか江戸から、このたびの日光御造営がつつがなく終わるように祈念を凝らすだけがわたしの務めさ」
先に立ってゆく左膳の肩が、こまかく動いたのは、かれ、噴きだしたのらしい。
「プフッ! おまえに祈られちゃア、うまくゆく日光も、ぐれはまになるだろうテ」
「おふざけでないよ。あたしだって、こんな馬鹿げたことはしたかアないけれどサ、その一風っていう爺さんの御代参に、こうして毎晩、権現様へ参詣させられるんだもの。ところがね、ふしぎなこともあるものでネ」
とお藤姐御が、笑いながら話したところによると。
濃艶な櫛巻お藤が、朝夕宗匠の世話をやくようになってから、一風さん、とても若返って、別人のようになったというから妙だ。
と言っても、相手は百二十何歳という、伝奇的な御老人のことですから、むろん、二人のあいだにはなんということもないのですが、いったいお藤のような毒婦型の美女からは、その身辺に、一種の精気といったよう