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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
03 日光の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页
旅は道づれ
一
みなまで聞かずに、気も足も早い与吉兄哥、オイきたとばかり、すぐその場からお尻をはしょって、東海道をくだってきたのです。
旅は道づれ
一
一本道の街道筋。
チラホラ先へ行く旅人のなかに壺をしょって、恐ろしく早足にすっとんで行く若党姿を認めたのは与吉が六郷の川を渡って、川崎の宿へはいりかけたころだった。
たびたびのことで懲りているから、それをけっしてほん物のこけ猿だとは思わないが。
なにしろマア、ここでひさしぶりに茶壺らしい物を拝むとは、幸先がいい。おおぜいの人数で、大さわぎしてまもって行く壺こそ、贋物かもしれねえが、こうやって若党一人が、何気なく見せかけて、ヒョイと肩へかついでゆく壺……こいつはおおいに怪しいぞ。
芝居気のあるやつで、道の真ん中に立ち止まり、左の袖口へ右手を入れて、沈思黙考の体よろしく、与の公、首をひねったものだ。
それから。
腰の手拭をバラリと抜いて、スットコかぶり、あんまり相のよくない風態です。
すたすたと足を早めたまではいいが、先方の若党も、おっそろしく足がきく。
はじめ、与吉の考えでは。
柳生藩の急使という以上、すくなくとも五人や十人の供を連れて宿継ぎの駕籠かなにかで、ホイ! 駕籠! ホイ! とばかり、五十三次を飛ばして行くに相違ない。