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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
03 日光の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页
三
物質に変化しつつある。
しかも、ただ削り落としてしまえばよいのではない。
一枚一枚、小刀の先で上から順々に剥がすのですから、愚楽老人たいへんな役目を言いつかったものだ。
初代の柳生が隠したのですから、どうせ下のほうであろうけれど、もし傷つけでもしては、今までの苦心が水の泡。第一、日光御造営を目前にひかえて、柳生一藩、浮かぶ瀬のないことになる……と小刀のさきで蓋の紙をせせくる老人の額には、いつのまにか玉の汗が――。
三
めったに緊張したことのない愚楽老人、このときだけは、小刀で蓋の紙を剥がす手が、ワナワナとふるえたといいます。
それはそうでしょう。
何しろ……。
貧乏と剣術をもって天下に鳴る柳生藩に、莫大な財産がかくされてあるとの、諸国潜行の隠密、お庭番の報告を土台に、このたびの日光大修営の建築奉行を柳生対馬守におとすべく吉宗公に進言したのは、そのお庭番の総帥たるこの愚楽老人……今この壺の蓋から埋宝の個所を明記した古図が出てこない日には、愚楽さんの責任問題だ。
だが、しかし――百年もの長いあいだ、毎年上から上へと、糊と奉書で貼りかため、そいつがうずたかい層をなしているんだから、ちっとやそっとではうまく剥がれっこありません。