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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

四

お露はポカンとしながら、玄心斎、大八ら、五、六人のおもだった者が、にわかのしたく、あわてふためいて邸を出て行くのを、ぼんやり見送っていた。

四

人間は、思うこと意のごとくならず、心細く感ずる瞬間に、本心にたち返るものだ。

今のお蓮様がそうである。

故司馬先生の在世中から、代稽古峰丹波とぐるになって、この不知火道場の乗っ取りを策してきた彼女、それからこっち手違いだらけだ、策動にも、気持のうえにも。

第一に、義理ある娘萩乃の婿として乗り込んできた伊賀の暴れん坊に、お蓮様が横恋暴。道場も横領したいし、源三郎も手に入れたいし……これでは、お蓮様の鋭鋒もすっかりにぶってしまって、峰丹波の眼から見ると、はがゆいことばっかりなのはむりもない。

丹波もお蓮様も、柳生源三郎などはどうでもいいのだった。それよりも、彼が婿引手として持ってくる柳生家重代の秘宝、こけ猿の茶壺をねらって、壺を手に入れたうえで源三郎を排斥しようとしたあの運動が、最初から、いすかのはしと食いちがって……。

が、なんといっても源三郎を恋しはじめたのが、お蓮様にとって、思いがけない自己違算の第一歩。