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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
03 日光の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页
二
対馬守はそれを聞き流して、縁側へ立ち出た。
障子、ふすまなどを、自分であけたてするということは絶対にありません。小姓、お茶坊主などが左右にひかえていて、サッとひらくのです。
また、片引きということもない。音もなく引きわけになって、そこをスウーッとお通りになります。昔のお大名は、こういう生活になれておりますから、なかには、戸や障子は自分で開くもの、自動的にあくものと心得ている人もあったという。
鷹揚な突き袖かなんぞしたまんまふすまの前に立って、ひとりでにひらくのを待っていたが、いつまでたっていてもあかないので、ふしぎそうに唐紙をみつめて、トンと畳に足ぶみをしてじれた殿様がある、という話。
まさか……。
わが柳生対馬守は、そんな人間ばなれのしたお大名ではない。そのかわり、小姓どもが障子を開くのが遅ければ、手を出してあけるかわりに、蹴倒して通りもしかねまじい気性のはげしいお方。
弟の伊賀の暴れん坊が、いささか軟派めいているのに反して、兄対馬守殿は、武骨一方の剣術大名。
蹴るような足つきで本陣の長い廊下をツ、ツ、ツウとおすすみになる。さきへ立って雪洞で、お足もとを照らしてゆくお小姓は、押されるようにだんだん早足になって、これじゃアかけ出さなくちゃア追っつかない……。