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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

五

「事、権現様の御廟に関してまいります」

愚楽老人も、そばから口を添えるのを、聞いていた吉宗公は、ややあって、

「ウム、みなまで言うにはおよばぬ。そのように取りはからえ」

「ハッ。それでは、日光に必要なだけの金額を……」

「そうじゃ、どこかに埋めて――」

「その所在を図に認めて、これなる壺に納め、それとなく伊賀の柳生の手へ送りとどけますことに……」

御寝の間に謀議は、いつまでも続きます。

五

「しかし、上様……」

愚楽老人は何事か思いつめたように、

「ちょっと、その、張りこめてあった地図を拝見――」

「誰が見たとて同じことじゃ」

将軍様のさしだす、古びた小さな紙片を、愚楽老人は受け取って、

「フーム、あれほど禍乱の因となったこけ猿が、ただこれだけの物であろうとは、チト受け取りかねる。のう越前殿、この紙の虫食いの跡を、貴殿はなんとごらんになるかナ?」

「古文書に虫の食ったように見せかけるには、線香で細長く焼いて、たくみに穴をあけるということを申しますが、まさかそんなからくりがあろうとも――」

「イヤ、わからぬ。わかりませぬ――」

と愚楽老人は、からだに不釣合いな長い腕を、ガッシと組んで、考えこみました。