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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

三

さけぶと同時に、右手の雑木林へかけこんだのです。夢中でした。

壺をひっかかえて、ガサガサと灌木を分けてつきすすんでゆくと! 大きな栗の木が二、三本立っているかげに……ツツツン、ツン、ツン、こころ静かに調子を合わせる三味の音。

やにわにそこへとびこんだ与吉、ペタンとすわって、

「オ! 姐御! これあまア、おめずらしいところで。イヨウ! 死んだと思ったお藤さんとは、ヘヘヘ、丹下の旦那でも気がつくめえッてネ」

三

鳥追い姿のような、旅を流しの三味線ひき――。

笠の紅緒が、白い頬にくっきり喰い入って、手甲、脚絆――その脚絆の足を草に投げだした櫛巻お藤は、どこやら、風雨と生活にもまれ疲れて、とろんとよどんだ眼をあげて与吉を見ました。

と。

その顔はすぐ、いきいきとかがやいて、いたずらっぽく小首をひねったものです。

「ハテネ、たいそう慣れなれしくおっしゃるが、おまえさんは……どちらの?――」

立っていては藪畳の上に、腰から上だけのぞいて、儀作にみつかるおそれがあるので、与吉は壺を足にはさみこむように、ものものしくしゃがみながら、

「ナニ? 何? 姐御はおいらをお見忘れなすったというんですかい。