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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

四

思い出したように、歩をとめた泰軒が、

「安大人、お前は下山してしまっては、なつかしの父上に会えぬではないか」

「オオ、安の父親が知れましたか」

おどりたつ作爺さんの問いに、チョビ安は、

「ウム、おいらの父は、なんでもこんどの日光造営の竣工式に、紫の衣装をつけて出る人だと聞いて、それを頼りにこの日光まで、わざわざ会いに来たんだけど」

「ナニ。むらさきの衣装をつけて出る人だ?」

と立ちどまって考えこんだ作爺さん、

「フーム、紫の……イヤしかし、まさか――だが、伊賀にゆかりと言うことには……」

思いきったように作爺さんは、

「コレ、安、しっかりしろヨ。お前の父親かどうかは知らぬが、竣工の式に紫の衣装をつける人は、ただ一人……造営奉行の柳生対馬守様――と聞いたぞ」

「エッ! すると、それがおいらの父親!」

うめいたチョビ安は、何を思ったか、眼いっぱいの涙。おどろいたのは源三郎で、もしそれが事実なら、チョビ安は自分の甥。

「安ッ! 貴様は柳生対馬守の落し胤でもあるのか。えらいことになったものだな」

と呆然たる左膳へ、チョビ安はすすり泣いて、

「何言ってやんでえ、おいらアうれしくッて泣いてるんじゃアねえや。