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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

四

ふらふらしている左膳の腰を、通りぬけざま、ドウッ! 足をあげて蹴たおした。

空を泳いだ左膳、ヒトたまりもなくペタンと砂に尻餅をついたまま、行列の遠ざかるのを、しばらくじっと見送っている。

長い長い千本松原に、槍の柄が光り、お定紋に潮騒がまつわって、だんだん小さくなってゆきます。絵のよう……。

「ウフフ!」

小鼻で笑った左膳、砂をはらって起きあがりました。

四

その松原も、もはや出はずれようとするころ。

さっき左膳を、最後に蹴とばしてきた色の黒い侍。

「イヤ、そのときおれは、それは筋道が違うと、榊原に言ってやったのじゃ。いくら養子の身だからとて、そうまで遠慮する必要は、おれはないと思うのじゃが、何しろ、相手が相手じゃから……」

と同僚の噂話であろう。横にならんで行く、浅黄のぶっ裂き羽織を着た四十あまりの士と、しきりに話しこんでゆく。

と!

ふとうしろに、人の気配がした。なにごころなく振りかえってみると、まるでくびすを踏みそうに、さっきのみすぼらしい乞食浪人が、尻きれ草履を鳴らしてピタピタあとを追ってくる。

「こやつ、いつのまに――?」

噛みつきそうににらむと、その白衣の浪人は平気で、なおも背中がくっつきそうに追いすがってくるのだ。