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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

二

田丸老人がおどろいたのは、もっともで。

「殿、この女はいったい――旅のお慰みとしても、チトどうもお見苦しくは……」

「イヤ、さような儀ではない。いたって野育ちの女芸人、余にチト考えがあって、かように虜にいたしておくのじゃ。側女などでは断じてない。安心せい、安心せい」

「ホホホ、お大名のお妾なんて、そんな窮屈な役目は、こっちからこそごめんだよ。お爺さん、安心おしよ。なんてキョトンとした顔してるのさ」

二

対馬守は、ふと思い出したように、

「源三郎はいかがいたした」

「ハイ、それが、その、実は……」

と主水正は、言いよどんだが、

「たびたび御書面をもって、上申つかまつりましたとおり、司馬先生生前より、妻恋坂の道場に容易ならぬ陰謀がありまして――」

「イヤ、それは聞いた、聞いた。その後どうなったかとたずねておるのじゃ」

「あくまで源三郎さまを排除申しあげんという一味の秘謀らしく、源三郎様には、先ごろより行方知れずになられ――」

それを知りながら、なぜ腕をこまねいておるかッ? 高大之進をはじめ、腕ききの者をそろえて出府させてある。それよりも、源三郎つきの安積玄心斎、谷大八等は、いったい何をしておるのじゃッ!……と、頭ごなしにどなりつけられるかと主水正首をすくめて、今にも雷の落ちるのを待っている気持。