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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
03 日光の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页
二
今ごろは二人で、穴の中の水底であがいているであろう」
両手で顔をおおったお蓮さまを、ジロリと見やって、
「サア、これで夜中を待って、上からあのおとし穴をうめてしまうだけのことだ」
「何百年か後の世に、江戸の町がのびて、あの辺も町家つづきになり、地ならしでもすることがあれば、昔の三方子川という流れの下から、二つの白骨がだきあって発見さるるであろう、アハハハ」
いい気で話しあっているこの連中を、よく見ると、みなあの焼け跡の近所をウロウロしていた農夫や、町人どもで、あれはすべて司馬道場の弟子の扮装だったのだ。それとなく火事の跡のようすを偵察していたものとみえる。
「サア、酒がきたぞ」
大声とともに、一升徳利をいくつもかかえこんで、このとき、納屋へかけこんできた者がある。
二
見ると、左膳に火事のことなどを話したあの町人である。
酒を買いにいって、いま帰ったところだ。
「サア、おのおの方、これにて祝盃をあげ、深夜を待つといたそう」
と言う彼の口調は、姿に似げなく、侍のことばだ。
これも、司馬道場の一人なのである。
一同は歓声をあげて、そこここにわりあてられた徳利を中心に、いくつとなく車座をつくって飲みはじめる。