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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

三

つつしんで御挨拶申し上げているのに愚楽老人は、そういう儀礼はいっさい抜きで、いきなり、友達かなんぞのように将軍様へ話しかけて、

「どうしてこの壺が、越前の手にはいりましたか、そこらの筋道は、なにとぞおたずねなきよう」

「ホホウ、例の大金の所在を知るこけ猿とやら――どれどれ」

乗り出す吉宗公……愚楽老人はまるで自分が悪戦苦闘ののち、やっと手に入れたような顔つきだ。

三

吉宗公はせきこんで、

「愚楽、越前。お前たちはもうその壺をあけて見たであろうな」

「ハッ」

と越前は平伏して、

「ところが、紙片などは中にはいっておりません――」

言いかけるそばから、愚楽老人は、まるでお風呂場で背中を流しているときのように、気やすに膝をすすめて、

「それが、上様、ふしぎじゃあございませんか。何もはいっていないんで」

吉宗公は腕組みをして、眼をつぶった。

「フウム、はいっておらぬ。スルト、柳生の埋宝というのは、ひとつの伝説……いや、とんでもない作りごとにすぎなかったのかな」

ニヤニヤした愚楽老人、

「上様、おたずね申しあげます」

「ウ? なんじゃ」

「およそ紙きれなどを壺にかくすといたしますれば、まず、どこでございましょうな?」