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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

玉手箱

一

お城でこんな無作法な居ずまいをする者は愚楽老人のほかにはない。

これは、まず、怪異なかっこうをした亀の子が、上げ潮にうちあげられてきれいな砂浜で日向ぼっこをしている形。

とたんに、そとの廊下を、やさしい跫音がすべるように近づいて来たかと思うと、静かにふすまを開いて、顔をのぞかせたのは、奥女中の一人だ。

「あの、南のお奉行様が、至急御老人にお眼にかかりたいとのことで……」

玉手箱

一

夜分、大岡越前が、至急自分に会いたい……と聞いた愚楽老人、スックとたちあがった。

スックと――なんていうと、馬鹿に背が高いようですが、三尺ほどの愚楽老人なんですから、たてになっても横になっても、たいした違いはないんで。

壺! こけ猿!

と、すぐピンと頭脳にきたが、静かな声で女中へ、

「どうぞこれへお通しくだされ」

と言った老人、チョコチョコと隅へ行って、衣桁に掛けてある羽織をひっかけた。

葵の御紋これ見よがしの、拝領のお羽織。

愚楽さんは、この羽織を着なければ人に会わないことにしているんです。子供みたいなからだに、大人の羽織をはおったのだから、まるで打ちかけをひきずったよう――しかつめらしい渋い顔で、ピタリ着座して待ちかまえているところへ、