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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
03 日光の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页
源三郎はいてもいなくても、同じことだと言わぬばかり、なんのかわりごともなかったかのごとく、今までと同じく朝夕を続けているだけ。
渋江の寮の火事から、この妻恋坂の道場へ引きあげた当座は、今にも、奥座敷の伊賀侍から斬り込みがくるかと、日夜刀の目釘を湿し、用心をおこたらなかった丹波の一党も、何日過ぎてもなんのこともないので、だんだん気がゆるみ、
「柳生一刀流などと申しても、しょせんは、一人二人の秀抜な剣士をとり巻く烏合の勢にすぎぬとみえますなあ」
「さようさ。まず柳生対馬守と源三郎、恐るべきはあの兄弟だけで、ほかには骨のある者ひとりもおらぬとみえる。主人に害を加えたは、われらとわかっておっても、復仇ひとつくわだてるではなし、ああやってのんべんだらりと日を送っているとは、イヤハヤ、見さげはてた腰ぬけの寄りじゃテ」
「ひとつ、笑ってやれ、そうじゃ、皆そろって、笑ってくれようではござらぬか」
などと、ものずきな若いやつらが五、六人、縁側へ出て、奥庭のほうをむいてワッハッハッ、ハッハッハッ……と、頼まれもしないのに、御苦労さまに笑い声を合わせる。
妻恋坂上一帯を領している、宏大もない司馬の屋敷。