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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
03 日光の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页
侍女をも遠ざけて、ただひとり。
脇息に、ほっそりした被布姿をよりかからせていたお蓮様は、ホッと長い溜息とともに、眉のあとの赤い顔をあげるのも、ものうそう……。
「何度も言うようじゃが、寝覚めが悪いねえ、丹波」
「またさようなことを――!」
眼も口も、人の倍ほどもある大柄な丹波の顔に、すごい微笑がみなぎって、
「お蓮様ともあろう方が、あんな青二才のことをいつまでも――はっはっはっは、イヤ、私はまるで胸がつかえるようなうっとうしい気持です。あっちへまいれば、萩乃様は萩乃様で、源三郎をおもって、シクシク泣いてばかりおいでになる。こっちへ来ればこっちで、あなた様が同じ源三郎をあきらめきれずに、この気っ伏せのありさま。どうもおもしろくない」
と、はいって来て、
「いけませんな。そうクヨクヨなされては。なくなった大先生のおぼしめしどおり、源三メを萩乃様に添わせて、われらはこの道場を立ちのくか――面目にかけてそれができぬ以上、あれくらいの荒療治は当然ではござりませぬか。サ、御後室様、お気をなおして、すこしお庭先でもお歩きになっては」
お蓮様は返事もしない。頭痛でもするのか、白い華奢な指さきで、しきりにこめかみを押え、額に八の字を寄せてだまりこくっている。