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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

一座に、しばし沈黙が落ちた。さすがの対馬守さまも、お顔の色をお変えになって、

「ナニ、財宝が見つかったと?」

半信半疑の面もちで、左右の近侍をみわたすと、

一同、おどりたちたい衝動、さけびあげたい歓喜をこらえて、御前だから、じッとがまんをしているようす。

「上屋敷の隅に、ハテナ?」

つぶやいた対馬守の低声は、皆の耳にははいらなかった。殿様はさすがに、はやくもこれには何か仔細がある、ときっとからくりがひそんでいるに相違ないとにらんだのですが、家臣のまえ、さりげなくよそおって、

「で? 主水正は、余に江戸へ出てまいれと、それでそちを迎いによこしたのか」

「ヘイ、至急に御下向をわずらわしたいと、手前お迎いのお使いなので」

「出てきたからよいではないか。ここはもう程ヶ谷じゃ。江戸はつい眼と鼻のあいだ……江戸へ近づけば、日光へも近うなる……」

家老田丸に会えば、すべてがわかることだが……かならずこの裏には、おためごかしの公儀の手が、働いているにきまっているぞ――。

壺の財産が見つかった……どんなにおよろこびになるかと思いのほか、対馬守はだんだん蒼白に顔色を変じて、両手がブルブルとふるえてくる。