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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

その大声に、供溜りにいたらしい若侍が五、六人、バラバラッととびだしてきたが。

それよりも!

与吉のおどろいたことには――。

あがり框にせのびをして、じッと戸外を見守っている人影……江戸へかえったとばかり思っていた若党儀作ではないか。殿の御前をさがってきた儀作、表通りにたちさわぐ人の声々に出てみたところが、あの胡麻の蝿みたいな町人が、小意気な三味線ひきの女とならんで立って、何やら番士のとがめをうけているようす。

ひと眼見るより儀作は、

「オッ! つかまえてくれ! その男だ、その男だッ!」

はだしで土間へかけおりました。と、若侍は何をあわてたものか、二、三人折り重なって、櫛巻の姐御をギュッとおさえつけてしまったから、儀作は頓狂声で、

「女ではない! ソ、その男! 男のほうを……!」

ナニ、同じおさえつけるなら、女のほうがいい――侍たちがそんなことを言ったかどうか。

このあいだに与吉は、肩の壺を地面へほうり出して、キリキリ舞いをしていたが、やがて方向がきまると、一目散にかけ出した。グイとお尻をはしょった儀作、足の裏を夜空へむけて、追う、追う……追う。

二

不敵な唄声とともに、この本陣の表口に、ガヤガヤという人の気配がわき起こったようすだが。