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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

ピタリ両手をついて、額を畳におしつけた瞬間。

カラリ!

廊下にむかった障子があいた。待ちきれなくなった治太夫が、殿の許しを得ずにあけてしまったのだ。

「殿! ただいまこれなる本陣の表通りに――」

言いかけた治太夫、見ると、あろうことかあるまいことか、殿様がばったみたいに平つくばって、おじぎの最中だから、

「オヤ! これは御酔狂ナ……何かお茶番でも!」

「無礼者ッ! 誰がそこをあけろと申したッ!」

醜態を見られて、対馬守はてれ半分、カンカンになってどなりつけた。

「今この畳へ、宗匠が針を落としたというから、老人のことじゃからさがしてやっておったのじゃ」

はりとはつらい……。

その鼻先へ、治太夫、かかえて来た壺を突きつけんばかりに差し出して、

「申しあげます。儀作の奪われました壺が、戻りましてございます。唄うたいの男が、お宿の前で儀作に追いかけられ、ほうり出して逃げましたので、運よく割れませんでしたのが、何よりのさいわい」

「ナニ? 壺がかえったと? よし、ちょうどよい折りじゃ。一風に鑑定させよう」

たくましい腕をのばして、むずと壺を引ったくった対馬守は、

「宗匠ッ! これはこけ猿かどうだッ」